2006-08-30

オーマイニュースと群集の知 - 2ちゃんの意見も案外正しい

良い情報、良いサービス、良い商品の、自律性フィルタリンガとしての集合知/群集知を使う、というのがWeb2.0の基本概念の一つだ。

日本で本家ほどスラッシュドットやdiggぽいものが流行らないのも、Newsing等のニュースアグリゲータが伸びないのも2ちゃんねるのせいだろう。
アングラ、便所の落書き、ごみ溜めと散々なことを言われ、ニートやひきこもりの温床のように言われる2ちゃんねるだが、情報の精査とモラルに関して優秀だと思うのだ。

はからずも話題になってしまったオーマイニュース(Oh My News 以下OMN)ではっきりと浮き彫りになったんじゃないかと思う。

一応、OMNの概略。
ジャーナリスト鳥越俊太郎を編集長として向かえた韓国老舗のニュースポータルの日本版。さる08月28日に正式稼動した。出資は韓国政府に公的資金を投入された半官の韓OMN社とSoftbank。
「市民記者」という実名登録の一般人記名ニュースがコンセプトで、鳥越編集長曰く 「2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る」(ITmedia)
 「ブログはそれでいいんです。匿名掲示板とか、ブログの存在を全く否定する気はない。 彼らはそこで遊んでいればいいし、楽しんでいればいい」(月刊「FACTA」)
と宣戦布告。公正中道なニュースサイトを目指すそうな。

Openしてみるとサヨク系プロ市民や著名反日活動家からの感情論、印象論がニュースとして配信され、「ごみため」とまで言われた2ちゃんねるから、多くの論理的反論がコメント欄に埋め尽くされた。
またワザと過剰にサヨク風な典型文を投稿した所謂「釣り」文章が、ニュース記事として公開日のTopニュースにされ、それを暴露する投稿まで載り祭りとなった。


実は、2ちゃんねるを信頼している。(こういうこというと「プ」とか言われそうだけど)
家電の購入、観に行く映画の選別、アプリ購入の検討など、必ず2ちゃんねるを見て決めている。
もちろん、2ちゃんねるのスレの1レス単体では信用しない。
が、2ちゃんであいまいな発言をして、一斉にツッコミ入れられて焦ったことのある人なら判るだろうが、嘘や非論理的部分、知識不足などは即座に訂正が入る。しかもソース付きで。

Web上のデータとは玉石混合が基本で、どうやって玉だけ取るか?その玉のなかでも欲しい玉だけ早く探すか?にかかっていって、その為のタグ/フォークソノミやRSSリーダやSBMなのだが、1つ1つはシンプルなのだが、民主主義過ぎてタグ打つ側の人間までも玉石混合していく。
結局、タグ打つ人をタグ打ちして管理(はてブやdel.icio.usの他人のブックマークをRSS購読するなど)することになる。
単体テストは巧く動いたけど、結合テストが鈍重で問題だらけなシステムみたいという感じ。

2ちゃんねるだと、あいまいなレス→ツッコミが非常に早くソースがついてくると1レス+ソースの確認で終わる。数時間ほっておけば、誰かがそのソースを見ておかしければさらに突っ込み返してくれてたりする。その議題が専門外なら他の誰かの検証に完全依存してもいい。大きな間違いじゃない確率が高い。

こういうことを、きっぱりと言えるようになったのも、年末の「オタク大賞」という毎年恒例のイベントで岡田斗史夫氏が「2ちゃんねらーはいい人たちですよ。あんなにモラルに厳しいんだもの」と言っているのを聞いて目から鱗だった。

2ちゃんねる、特にシリアスな問題では、徹底してソース(元の資料)を要求される。
伝聞、部分引用、記録者の資質まで評価される。
家電だと、スペック、使用感レビューどころか、そのチップを作っている子会社の過去実績なんてのまで出てくる。
このソース至上主義とチェック者の多さというのは、便所の落書き議論に騙されたり辟易したこの8年の2ちゃんねるの歴史から自発的に生まれた合理的文化だろう。
OMNの印象論やステレオタイプに対して、元資料明記で反論し、記者に対して言説の根拠を追及していく流れを見て非常に感慨深かった。

あと、2ちゃんねるを良く知らない人のために書くと、便所の落書きといわれ、殺人予告や自殺幇助などがニュースになるというイメージのわりに、びっくりするほどモラリストだというのも2ちゃんねるの特徴としてよいと思う。正直、僕には息苦しいくらい。

公衆マナー、馬鹿親、無軌道な若者、クレーマ、偏向報道、学業、製品品質などなど、面白くも何てことも無いくらいモラリストである。
タバコのポイ捨てなんて書いたら、数十レスくらい叩かれ続けるだろうw。

例えば、僕は楽天イーグルスファンだが、福森投手のBlogが面白くて非常に人気なのに、「Blog書いている暇あったら練習しろ」という声が大きい。
暴露やネタやゴシップの宝庫だろうに、嫌われる学校の先生みたいな意見がいっぱいイーグルススレに書き込まれている。

少なくとも、日本においては、メディアリテラシが鍛えられているトラフィックの多いサービスが10年近く存在していること、が特殊な部分である。
ソース至上主義とは、非常にピュアな理想主義である「正しいことって何?」なわけで、日本的な「空気を読む」と合わさったものになってる。
さらに、メディアタブーや自主規制への不信がこの傾向に拍車を掛けている。

  • 叩かれるのが嫌
  • 正しいことが知りたい
  • 裏を取らない情報は情報で無いという基礎を知っている

匿名掲示板であってもこういう自制にむかう自律的情報フィルタになる。
偽悪的で便所の落書きと自覚したプレイヤの集合知すら優秀なフィルタになるという実験結果を持つ国なんだな。
※2ちゃんねる初心者は3ヶ月は読むだけ(ROMという)しておかなければ酷い目にあうだろうから注意


トラフィック量と、自律に任せるシステム、空気を呼んだ誘導の3点が集合知の要点になるだろう。

じゃあ、YouTubeやWinnyのような著作権侵害は?
僕は、この「神の見えざる手」から今の著作権システムに悪の判定が出された、とみている。

著作権そのものにアンチな訳じゃない。iTunes Music Storeが曲が少ない以外で叩かれないのは、課金にもDRMにも集合知はアンチではないということ。

既存メディアよ。政府諸官庁よ。一度まっさらな目で2ちゃんねるをみてみたらどうか。受けいられるサービスや規制とは何かがこんなにデータ化されているのに。