2006-08-25

広告経済規模からWeb2.0をみる

ニセモノの良心 - Web2.0のパイの大きさより

広告費にはGDPの1%という経験的な枷がはめられている。
現在の日本経済の規模からすると、広告費総額は5兆円強といったところ。 
 まぁ、これ以上の増加もあんまり見込めない。

 5兆円って大きな数字に見えるけど、鉄道も電話帳も折り込み広告もテレビもラジオもインターネットも、世の中の広告とされるもの全てを合算して5兆円だ。しかも制作費込み。利益率案外薄め。

 ちなみに5兆円といったら、企業で言えばNECや富士通一社の連結売上高と同等に過ぎない。ちなみに日立の半分だ。

 つまりWeb2.0は、成長限界を最初から定められてしまっている。
 どんなにWeb2.0なるものが成長して、鉄道も折り込みもテレビもラジオも全て駆逐してそこの広告分野に置き換わったとしても、それは実体経済における富士通1社分の影響力しか与えられないのだ。
 まぁ既存広告全てをネットが駆逐できるとは思えない。いいところ今の10倍のテレビと置き換わる程度だろうから2兆円。スズキの連結の2/3くらい。
※全角英数だけ半角英数に修正しました


書いているのはsoulwardenさんという、プロフィール曰く地方TV局のTVマンの方。


このエントリは元ネタにGIGAZINEのWeb2.0解説シリーズ(12)がある。
あれは低ITリテラシ層をターゲットに思っているらしく(GIGAZINE読者からはずれてなくね? ん?それが目的か?)、批判が多かったのも事実。あと、まだ完結している連載じゃないし(2006.08.25現在)。

非常に世間のイメージをしっかりと分析していて説得力のあるエントリなので、個別に、回答してみようと思う。
この辺、情報格差を起こしている地方ITの経営者や、管理職を説得せねばならないぶんだけノウハウあるしねw


広告規模
まず、広告費が安い(安く出来る)、費用対効果(ROI)が高い、よって今まで広告を出せなかった中小零細が出しやすくなったこと。つまりパイは広がっていること。
間接的にWeb2.0をバックアップしている存在としてのリスティング広告、アフィリエイト、アフィリエイト補完のamazonアソシエイトなどや、電脳卸のドロップシッピングなんかが、頭に入っていないと理解しにくいのかも。

この肝はコンテキストマッチという概念で、あるWebページの文章文脈から自動的に内容のあった商品を露出する、と覚えればいい。
テクニックやキーワード精査が必要だけど、やろうと思えば月1万円で数十万人に商品名を露出させ、3000人くらいそこそこ買う気のある客を連れてこれる。

amazonアソシエイトは、amazonの商品を引っ張ってきたり、決済や検索などを自サイトに(比較的手軽に)組み込めるので、マイナな本や分野もマイナな分野を目的として来た客に露出させられる。
ドロップシッピングは、登録された商品のカートを自サイトに組み込めて、仲介企業(電脳卸など)は在庫を持たず商品管理もせず、決済を代行し、実際の商品管理は登録した出品者が行うというもの。誰もがリスクが低くコストも減らせる。

これらは、ほとんど成果報酬なので、広告主にとってリスク・コスト概要に低い。

じゃあ、現在、実際にあまりパイが広がっていないのは、デジタルディバイド(IT格差)なわけで、本来なら地方や個人の1次、2次産業が代理店や流通に過剰に搾取されずに世に出せるわけだから、ヤフオクや楽天に替わるプレイヤが出てくれば、時間の問題でいろいろ変わる可能性がある。

ちなみに、ヤフオクや楽天ですら難易度が高いのだから日本版GoogleBaseが来たら、物凄く字が大きいIT用語ゼロなCMS(Web知識無しでサイトを運営できる仕組み)アプリとかおいしいネタだ。

これが今のWeb商売の収入元バックボーンです。


利益率
まずメディアとなるインフラ、つまりWeb2.0サービスだが、タダでサービス運営しても意外といけてしまう世の中になってしまったと考えていただきたい。

誤解や炎上を恐れずに書けば、例えるならw、

  • JAVAなどのシステム開発=本格的ゼネコンの大規模建設※JAVAもオープン化するけど便宜上
  • オープン系システム開発=プレハブ

Ruby on Railsという、耐久性も大規模対応性も本格建設と互角なプレハブが技術側のコスト削減のバックボーンになった。つーかなりそう。
で、外装もペカペカの大理石とか超高級素材が、ぺたっと貼れるときたもんだ。(これをAjaxという)

プレハブとして異様な高機能を持った、という側面もあるが、Web2.0というのはユーザ主導の集合知がサービスの価値であり資産価値だから、仕組みについては、投稿→いろんな条件で並び替え→いろんなデータの表示と、単純な形を取れる。
もちろん取れないものも多いが、それでも簡略化はしやすい。
旧来のシステムは、設計や解析、旧システムとの融合など九龍城のような違法増築ビル状態になったりしがちだが、そのしがらみもない。

回線も、サーバも高機能化し、安くなった。YouTubeみたいなトラフィック地獄なサービスは別として、そこそこの規模のサービスが事務所の片隅のサーバラックで動いていたりもする。

3人のプログラマが半月で作ったWeb2.0サービスとかざらにある。


支配・寡占
誰だったか、Web2.0とはデータベースを得ること、と言っていて、凄く納得した。
タダで、多くのユーザを登録させ、行動を逐一データベースに記録し、行動に合わせてソートした表示を見せることで、使いやすさと広告効果を高めるわけだ。

mixiで○○というコミュと△△というコミュにいて、××についての日記を書いている人に打つ広告…という感じか。

Web2.0は集合知の価値とサービスと言ったけど、ユーザの目的はメディア不信の補完として他の人の実際の意見がほしい、が代表的なWeb2.0サービスの利用動機だから、行動すれば行動するほど、自分が欲しい情報が入ってきて自分好みになっていく。つまり、一定以上使い込んだサービスからはなかなか脱出できない。

  • ユーザ:欲しい口コミが探さずに出てくるし、趣味に近いものが提示される便利さ
  • 運営者:いろんなユーザの広告リサーチサンプルを持ったメディアとしての価値
  • 広告主:絞り込んだユーザに低コストで効果の高い広告が打てる


運営者は無料でいいからデータベースが欲しいのだ。
支配寡占をしたいし、しかも、一度支配したら覆されない。
だって、集合知は人が多くて何ぼだから、先行寡占サービスに人が集まるだけだからだ。


双方向
集合知メディアに企業自身が入っていくのも低コストである。
例として、企業のビジネスブログとか、ファン専用mixiみたいなSNSなど。

大成功例のブラザー工業ブログ Brotherhoodのように、開発者が工夫や苦労話を赤裸々に語る手作りブログに読み物としてのファンが付き、いつの間にか製品のファンにもなってしまった例は今までだと考えられない。
企業情報や宣伝文句を購読する人がいる、とか、その「宣伝」を面白いよと自分のブログに書く人、それを読む人、さらにそれをブログに書く人が生まれる。

有名格ゲーやロープレの交流WikiやSNSなど企業が運営してみたら、どれほど次回作の参考になるか。

口コミ、信頼感、情報収集など、メディア不信の世の中でユーザが一番信用する口コミにコミットできるメリットは経済規模に顕在化されにくいだろう。


soulwardenさんの言う、
・・・うーん。だったら昔よくあったラジオの電話リクエスト番組はWeb2.0だな。

というのをWeb2.0として正当(?)にするなら、
  • 電話をしたら、リクエストが個々人別にかかり、
  • リクエストしていない人には、過去のリクエストや持っているCDから解析されたお奨め曲がかかり、
  • ラジオ局にはその履歴がデータベース化され、
  • みんながそのデータベースを自由に使えていろんな解析が出来て、
  • 自分のブログで使えて、
  • そこにレコード会社が新曲の市場調査とかでコミットも出来たりして、
  • その感想も口コミの書き込みでみんなが共有できる。

という感じ。


整理すると、

  • 零細や個人など広告主になりえなかったプレイヤが広告主になる
  • その広告は低コストで効果が高い
  • サービスの開発費や維持費が安くなった。ケースによっては激安になった。
  • ユーザの行動がデータベース化され、そのデータベースに資産価値が付く
  • ユーザは大手メディアの情報に出ない口コミを信用するケースが増えた
  • 大手メディアの情報をネットで調べてから自分の情報とする生活スタイル

という、各プレイヤの、利害の一致がWeb2.0であるといえる。

つまり、パイは拡大し、パイの横取りは先行することで得られるチャンスで(=Web2.0バブルね)、パイの単価が下がり、味付けが今風になった。

という感じで説明になっただろうか。

コンシューマ向けに書いたので、質問があれば、コメント欄にどんどん書いてください。